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レースから見るWTRR

 毎年クラシフィケーションが発表されるたびに、個別のレースのレートが今ひとつ分からなくて苦労するのですけれど、JRAサイトなどで保存してくれている過去のシーズン途中ランキングのほか、こないだの Racing Post の特集でも豪華 PDF 版の方では(北半球馬だけですが)110以上のレートが全部掲載されていたので、ある程度以上のビッグレースの個別のレーティングなどを拾い集めてみました。表にするとたったこれだけだけど、結構色々ファイルをめくって作るので、労多くして実少ない作業ではありますな。
 条件としては、芝限定で、レーティング123以上を得た牡馬と120以上を得た牝馬合計11頭が勝ったG1レース、くらいの条件でフィルタしてみました。こうして見ると、今年のトップホースが辿った道のり、みたいなものが見えてくるかなぁとは思いつつ、またレースとしてどのようなレースが今季高いパフォーマンスを見たか、ということの基準にもなるのでしょう。という訳で、ご笑覧あれ。

レース|国  距離|   1着馬       2着馬       3着馬       4着馬   | RR 
=====================================================================================================
シーC|UAE 2400|123*Heart's Cry   116*Collier Hill  114 Falstaff    104*Ouija Board(f)|114.25
免税店|UAE 1777|123 David Junior  116*The Tin Man   113 Seihali     110 Host     |115.50
天皇春|JPN 3200|123*Deep Impact   117 Lincoln     112 Strata Gem   111*Eye Popper  |115.75
2000G|GB  8f  |124*George Washin. 117*Sir Percy    114*Olympian Odys. 112*Araafa    |116.75
コロネ|GB  12f+|125 Shirocco    118*Ouija Board(f) 120 Enforcer    115 Ace      |119.50
プリW|GB  10f |120*Ouija Board(f) 121*Electrocution. 119 Manduro     117*David Junior |119.25
宝塚記|JPN 2200|125*Deep Impact   115 Narita Century 114*Balance of Ga. 111*Daiwa Major  |116.25
サンク|FR  2400|119*Pride(f)    121*Hurricane Run  118 Laverock    115 Policy Maker |118.25
愛ダー|IRE 12f |126 Dylan Thomas  117 Gentlewave   115 Best Alibi   113*Dragon Dancer |117.75
エクリ|GB  10f |123 David Junior  118*Notnowcato   117 Blue Monday(g) 117 Aussie Rules |118.75
パリ大|FR  2400|119*Rail Link    115*Red Rocks    114 Sudan      114 Grand Couturi.|115.50
Kジョ|GB  12f |126 Hurricane Run  125 Electrocution. 124 Heart's Cry   120 Enforcer   |123.75
ナッソ|GB  10f+|120*Ouija Board(f) 119 Al. Goldrun(f) 115 Nannina(f)   110*Chelsea Ro.(f)|116.00
愛チャ|IRE 10f |126 Dylan Thomas  122 Ouija Board(f) 117*Al. Goldrun(f) 117 Mustameet   |120.50
凱旋門|FR  2400|127 Rail Link    123 Pride(f)    121*Hurricane Run  117 Best Name   |122.00
エリS|GB  8f  |127 George Washin. 122 Araafa     118*Court Masterp. 115 Killybegs   |120.50
英チャ|GB  10f |123 Pride(f)    119 Rob Roy     119*Hurricane Run  116 Olympian Odys.|119.25
BC牝芝|USA 11f |122 Ouija Board(f) 116 Film Maker(f)  115*Honey Ryder(f) 112*Wait a Whi.(f)|116.25
ジャC|JPN 2400|126*Deep Impact   121 Dream Passport 116*Ouija Board(f) 117 Cosmo Bulk  |120.00
香港C|HK  2000|118*Pride(f)    121 Admire Moon   118*Vengeance of.  115 Viva Pataca  |118.00
有馬記|JPN 2500|127 Deep Impact   119 Pop Rock    118*Daiwa Major   118*Dream Passport|120.50
 ざざっと見ていて思うのは、中距離不毛と思われつつも、意外と中距離のレースが上っていること。ただ、それに貢献しているのは牝馬の*ウィジャボードや Pride、或いは愛ダービー馬の Dylan Thomas で、いずれもクラシックディスタンスでも十二分の実績を示している(現実にこの3頭ともI,L両方でのランクインとなる)、そういう意味では中距離が独自のアイデンティティを保っていなかったというのが正確なところなのかなぁとは思われます。それにしても、この中に7回入っている*ウィジャボードの頑張りは目に付く所であり、ある程度凡走しても着に入ればクラシフィケーション・レートを上げるので、そういう意味では各国の主催者にとってこれほど有難い馬もいなかったのではないかと。
 結構大きなレースで今回このリストに入らなかったのは、英仏ダービー、インターナショナルS、マロワやムーランといった仏マイル戦線、そしてBCターフとマイルといったところ。英ダービーは今年はちょっとレベルを上げる存在がいなかった、というかやはり欧州においては叩き合いのレースは比較的全体レベルとして低く出るケースが多いのですが、今年も何というかその罠に嵌った印象。仏ダービーは、パリ大賞の結果を見るに、完全に距離短縮が裏目っているようにしか思われない。結局パリの方は、当初のレートで118と114しか貰えなかった1,2着馬が凱旋門とBCターフという世界最高峰のレースを制した訳で、この段階でレートを稼ぐようなメンバーにならなかったのはフランス競馬の興行としても不運だったのではないかなぁと見えるだけに。マイル路線は、Librettist が今ひとつ華のない存在であったのが惜しまれる所か。弱いとは思わなかったんだけど、結果としては George Washington 一色みたいになって、Araafa も引き立て役という印象。まぁでも*コートマスターピースも日本で見る限り印象としては微妙で、致し方ないか。BCは今年は芝に関しては何とも……であったが、やはり芝路線のこの辺りはかなりレッドオーシャンなのだと思う。マイルとてQE2と競合するし、ターフに関してはカナディアン国際と英チャンピオンが真っ向勝負を仕掛ける一方で、日本も天皇賞とJCを擁しており、遠征馬を送る気配がない訳で、必ずしもBCだけが左団扇という感じではないんだろうなと。
 あとは、やはり有馬記念は全体で見てもかなりハイレートなレースとして評価されているな、ということであろうか。基本的に2着馬はメルボルンCに出ていて、3着馬はキャッシュコールマイルを圧勝した馬との比較があり、4着馬はJCでの*ウィジャボードの比較がある訳で、その意味ではやはり海外遠征の効果がレートを引き上げたという印象で、その意味でもディープの得た数字は「ディープのレート」である以上に、「日本競馬が得たレート」だなぁ、と。

◆ところで。

 実際のところディープインパクトの「潜在的なレート」がどの辺りにあったかを考えるには、詰まるところ「凱旋門で負けたディープに、ベスト(ハンデキャッパー的には06有馬だが、それはともかく皆様それぞれがディープのベストレースと思われる時と考えればよろし)のディープはどの程度の差をつけて勝つことが出来るか」という思考実験になるのだろうと思う。仮にそれが2ポンド=1馬身程度の差であると思われるのならば、WTRRにおけるレートは妥当であることになる。ただ、恐らくそうだとはハンデキャッパー自身もさほど信じてはいないのではなかろうか。
 この実験においてある種のサンプルを提供するのは、1999年の*モンジューであろう。彼はホームの凱旋門賞でベストのレースをして*エルコンドルパサーに勝利し、アウェーのJCで馬場や体調に利があらず、スペシャルウィークに敗れた。前者で得たレートが135、後者で得たレートは、ざっくりで119くらいなので16ポンド差。もしこれと同じ程度の差が「ベストのディープ」と「凱旋門のディープ」にあるのならば、凱旋門で125を得たディープインパクトの潜在レートは141となり、*ダンシングブレーヴと並ぶ史上最強レベルとなる。が、勿論それはヨタであろう。この差は多分に99年のレートがスペシャルとエルコンドルの能力差を正しく表現していないためのものである。仮に両者の能力差が前年のJCと変わらないと仮定するなら、その差は6ポンド。そしてそれを尊重してスペシャルの99JCの潜在レートを128とするならば、JCの*モンジューには124がつき、レート差は11ポンド程度に収まるだろう。一方で、スペ自身がある程度能力差を詰めていた(或いは98JCのスペがベストではなかった)可能性まで考慮するならば、もう2ポンドくらいは埋まるかと考えると、大体凱旋門の*モンジューとJCの*モンジューの差は9ポンドくらいで、まぁそんなものか、というところの数字には収まるだろうか。要するに、JCのデキで*モンジューが凱旋門を走ったら、9ポンド=2400の重馬場で5馬身か6馬身くらい落ちて、*クロコルージュといい勝負あるいは負けるかも、くらいだったろうという感じで、*ハイライズと*クロコルージュの比較でもまぁそこそこ妥当っぽい。
 これをディープに当てはめた上で、なおかつ*モンジューがトップと4ポンド差でディープがトップと2ポンド差という辺りを補正すると、凱旋門のディープとベストのディープは7ポンド差が目安となる。良馬場の2400ならば3馬身そこそこくらい前、な換算となろう。非常に大雑把な仮想ではあるが、その7ポンドをそのまま当てはめれば、ディープの潜在レートは大体132くらい、となるだろうか。勿論日本では史上最強馬を争うレベルであるが(というか現実に上回るのはエルコンドルだけで、あとは潜在的に*クロフネと*シンボリクリスエス、あとはナリタブライアンが相手となるくらいであろう)、欧州レベルでは「中距離の最強馬を10年分集めれば、その中でトップは争えないものの平均よりは明らかに上、2006年の競走馬の中では恐らくトップ」くらいのものとなるだろう。
 この数字に根拠があると主張するつもりはないけれど、ディープの強さを定量化するという意味では、そこそこ腑に落ちる雰囲気はあるかな、とも思わなくはない。

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Mahal Alysheba
Author:有芝まはる殿下。
自称ズデーテンラント公兼トールガウ、前メクレンブルク、バート・ドーベランおよびキシュベル方面伯。当然何らの領有権も領しないただの僭主のため、歪んだ根性で血統研究に勤しむ。

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