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2006年の海外遠征を振り返る

今年の海外遠征をまとめてみる@りあるの競馬日記さま

 2006年の海外遠征は、「充実」と「難しさ」の両面を現した部分はあった、と思う。
 ただ、その「難しさ」は、*エルコンドルパサーのような「海外に転厩する馬」を持たなかった以上は致し方ないとは思われる。ハーツクライなどは単純にディープインパクトと使い分ける選択という面で言えば、もうちょっとそういう選択肢を考えられる馬ではあり、現実に11月に至るまで日本で競馬をしなかったのだが、恐らくは橋口師はその判断をよしとしなかったのであろう。勿論、それはそれで否定すべきではない。*エルコンドルパサーの通った道をトレースするだけが「海外と戦う」ことではないのだから。
 結果としてはジャパンCがやや不運に終わったものの、アウトプットとして G1 を一つ圧勝して、かなり充実したキングジョージで惜しい3着を演じ切ったのだから、十分な充実振りではあった。しかし、結果としてディープの好敵手となりうるポテンシャルを持つこの馬が今シーズン3回しか競馬を使えなかったのはやや総合した実績としては物足りず、今年の日本競馬としての興行全体にやや影を落した感も否めない。国内でJCだけしか使えないのであれば、せめて国外をもう1, 2回は使えて欲しかったなというのが本音であるが、そのためには「海外に預ける」判断が必要だったのだろう。つまり、国内をベースにスポットで遠征する判断を取った割には、国内と国外での両立に失敗した、と総括されるのではないか。

 ディープインパクトの遠征は、結果としては語るに落ちるものとなってしまった。
 しかし、凱旋門賞には、やはり単純な2400のチャンピオンシップとして以上の難しさがある面は銘記されるべきであろう。それは、2シーズン制の日本と、1シーズン制の欧州の違いである。日本の厳しい夏がこの彼我のカレンダーの差異を作るのだが(因みに欧州でも、南寄りなイタリアは2シーズン制をとる。トップホースは英仏などに容易に遠征できるので余り関係ないが)、夏にある程度バイオリズムを下げた上で再び秋に上げるような仕上げを講じる日本に対して、欧州は初夏辺りから徐々にピッチを上げて、充実した状態で9月10月を迎えられるので、地元馬のアドヴァンテージはより大きいものとなる。そう考えると、春先に沙汰されていたキングジョージは春の余禄で戦うことが出来る点ではより楽な選択肢であったが、ハーツとの使い分けもあったし、何よりディープがディープである以上、「凱旋門」でなくてはならなかった、という事情もあっただろう。その一方で、ディープはまた「何かを擲って」凱旋門を使う選択肢は取らなかった。例えばゼンノロブロイなどは春天を捨てて宝塚ぶっつけ→イボアというローテを取ったが、ディープは「何も捨てずに」凱旋門を取りに行こうとしたのである。秋天は捨てたかも知れないが、秋 G1 を3つ使う点では変わらず、言わばローテを「減らして」はいない。このように「全て」を目標にするというのは、ディープインパクトにとってのある種の宿命に近い呪縛であっただろう。
 そして、レース前のエントリでも触れたが、凱旋門は意外とステップの選択肢が少ない。その上で今年のように極端に古馬に偏る年となると、トライアルから全力を出さないといけなくなる。これが、ディープインパクトにとってのもう一つの呪縛であり、それは「負けていいレースが存在しない」ということであった。極端な話、フォア賞など公開調教だと言うのは海外競馬ファンならば誰でも知っているし、池江郎師もそれを知らないことはなかったと思われる。しかし、レースに出る以上は「公開調教」として流すことは許されない。詰まる所、ディープは勝ちすぎていたために「負けないこと」のインセンティヴが高くなりすぎていた部分はあった。かくして、ディープはこの難しいレースにおいて更に自分のハードルを上げるような体勢で臨み、結果としてそれに見合う体調を整えることに失敗して敗れた、と結論付けられる。凡ミスには、集中力が足りない場合に起きるケースと、集中力を過剰に詰め込む中で「切れる」瞬間に起きるケースの両方がある。ディープを襲った「ミス」は、少なくとも現場レベルでは、後者だったのではないか。

 しかし、ディープの陣営がこれだけ自らのハードルを上げざるを得なかったのは、昨年以降の海外遠征における「充実」が大きく作用した結果、本来日本のごとき競馬国のチャレンジャーが持っているべきであった「格下の気楽さ」という状況から離れてしまったからであることも否めないだろう。ある程度以上のレベルの中距離馬が「普通に」走れば海外の G1 は取れるものだ、というのが完全に常識の域に到達したのが去年と今年なのであるように思われる。例えばコスモバルクがシンガポールにおいて特に大きな適性を持っていたとは考えづらい。しかし、バルクは単純に「普通に走る」ことが出来て(結果として、今年のバルクは完全に「普通に走れる」馬に変貌してしまっていた)、戦闘能力だけで押し切ったのだろう。その「普通」を最大限に見せたのが、叩いて良化されたデルタブルースが勝利したメルボルンCであろう。勿論デルタの偉業は不朽であるが、反面、この馬が「普通に」走った一方で向こうに*マカイビーディーヴァのような「普通でない」馬がいなかった中で、この馬の勝利があった。
 そして、先日の香港での敗戦は、殊更にそれに異を唱えるものではなかったのではないか。Pride に僅差負けならばアドマイヤムーンが世界的に見ても G1 級であるのは明確であったし、ソングオブウインドは故障があった以上「普通」とは言えない。そもそも菊花賞使った後に「普通」でいること自体が難しい訳で、これはむしろ去年のシックスセンスが「普通」に走ったことが褒められるべきである。そしてダンスインザムードがポカをするのは国内でもよくある「仕様」であり、スプリントは普通に走ってもオセアニア馬に通用しないのはこれまた常識であった。だからって、レースをやめるメイショウボーラーの頭のよさは異常だが。

 その上で、ある程度の域に達したからこそ見えてきた「難しさ」……まぁ実際のところ、それは*エルコンドルパサーの頃から気付かれていた部分ではあったのだが、実践的なレベルで初めて体験するものとして、ディープやハーツが経験した難しさが登場した、とは言えるのかもしれない。まぁ本当はテイエムオペラオーか*シンボリクリスエス辺りできっちり経験しておけば今年くらいに丁度いい感じで結実したのかも知れないが、別にそういう恨み言は取り上げるべきではないだろうし(そういう点では、ジャンポケ世代に故障が多かったのが一番痛かったか)、結局世の中は漸進的にしか進まない部分も大きいってことなのだろうし、そういうものをじっくりと愉しむのが競馬の長い目で見た愉しさでもあるのかとは思う。個人的には、ディープ陣営がハードルを上げたことに関しては単純に失敗と見るよりは、最終的にこれくらいハードルをあげた上で凱旋門に勝つ馬を自分が競馬を続けている間に見られればな、とも考える面は無きにしも非ずである(勿論、その前に「正しくハードルを設定して」勝ちに行く馬がいて然るべきではあるし、その馬はディープほどの圧倒的な成績を国内で収めている必要は無いだろう)。そして、現在の地力を本朝の競馬ができるだけ長く維持できるための知恵と、それを支えるために、魅力的な競馬を続けるための主催者の志を期待したい。

◆うむ。
 書いてみると、包括的というよりはやはりディープとハーツが中心になってしまう。
 まぁ有芝の拠って立つところからすればある程度それも致し方ないので(少なくともディープが現役である限りは、有芝は「ディープの語り部」であることを免れない気がするので)、出来れば他の誰かに色々複眼的な視点を含むようなエントリをこのお題で期待してみたいところではあるかな。

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こっちに書く
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ふるさとはいずこにありや冬の夜(即興)

今年の海外遠征でもっとも注目しなければならないのは、「海外で一番格かまたはそれに準ずるレースに対して普通に勝ち負けしている」ということですよね。ということは、パートI問題も含めての話になるのですが、この次に日本競馬が目指さなければならないのは「海外なんてどうでもよくなる日本競馬」ではないでしょうか。その方針の切り替えは、「覇を成し遂げた」あとではなく、「成し遂げてもおかしくない」いまこそやるべきではないかと。

最近考えているのは、「面白さ」と「正しさ」は同じ道ではない、ということです。

  • 2006/12/12
  • わむ(コメント厨) ◆ -
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レートでJCと凱旋門が2差

ってのは、99年とかを考えれば隔世かもですな。
「海外なんてどうでもよくなる」という意味では、ハーツやディープはその辺りまで割と考えて遠征した方じゃないですかね。本当はタップみたいな直前輸送にまで出来ればいいのですが、ああいうノウハウを積むにはもうちょっと気軽な挑戦という立場が必要でしょうし。
「面白さ」に関しては、有馬前くらいでちょっと何か書くかも。

  • 2006/12/12
  • 有芝まはる(ry ◆ LBrjZuRI
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Author:有芝まはる殿下。
自称ズデーテンラント公兼トールガウ、前メクレンブルク、バート・ドーベランおよびキシュベル方面伯。当然何らの領有権も領しないただの僭主のため、歪んだ根性で血統研究に勤しむ。

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