中央競馬史に残る感動のレース:98年菊花賞、セイウンスカイ 
◆Netkeiba:レース結果
1998年のクラシック戦線は、2歳時の異常な外国産馬の活躍によって、混沌としたスタートを切った。
その中で、母が*グッバイヘイローであるキングヘイロー、父が*サンデーサイレンスであるスペシャルウィークという2頭の血統馬が、ある程度○外のトップホース相手でも格好の付く相手として一枚上の評価を得て、弥生賞で激突する。そのレースに、2戦2勝の芦毛馬がいた。セイウンスカイである。父は既に廃用となった*シェリフズスター、名門西山牧場のオーナーブリードながら何故か色違いの勝負服、そして徳吉というリーディング下位の騎手を背にしたこの関東馬は、弥生賞で快調に逃げて直線で差をつけて快走する。そこからスペシャルウィークの見事な末脚が炸裂し、このレースではヒーローになり損ねるが、○外良血の席巻する世代にあって、一頭の変わり種が現れた、と見られたし、中にはこの馬をシンデレラ・ボーイと見立てた向きもあったであろう。
セイウンスカイは、そのような馬であった。
まばゆい血統背景の才能が揃う世代にあって、彼のアイドル性が輝き始めた。
この世代において、スペシャルウィークはなかなかに高い壁ではあった。横山典に乗り替わって、皐月賞こそ中山でスペシャルが仕掛け所を見失う中で、キングヘイローを粘りの走りで抑えたものの、ダービーでは福永キングの暴走に喰われて、スペシャルに完勝を許す。この時点で、血統的な奥行きでも体型でもステイヤーとしての本格性を秘めているように見立てられたライバルに菊で逆転するのは簡単ではないように見えた。
しかし、セイウンスカイもまた成長を遂げていた。枠入りを嫌がった京都大賞典で絶妙な緩急のペースで逃げてメジロブライトら古馬の一流を封じ、菊花賞を迎えた。皐月賞馬対ダービー馬、再戦のときである。馬場は仮柵が取れて時計の出るコンディション、奇しくも前走も開幕週であり、同様にラチ沿いを進めるアドヴァンテージをセイウンスカイは維持していた。
ならば、気風良く行くのみである。
迷うべきものは、何もなかった。
淀の3000は、スタート直後の一周目下り坂が一つのポイントである。ここで掛かると、最後の直線はより大きな負荷となり、なかなか勝つことは難しい。まだその頃には、下り坂どころか直線まで全力出しかけて最後圧勝するようなバケモノなど想像の埒外であった。さて、果たせるかなその一周目下り坂では、不器用なキングヘイローやエモシオンはもとより、一番人気のスペシャルウィークまでもが掛かり気味であった。このレースに向けての仕上げで燃えすぎたか。
「スペシャルの勝ちはない。」
自分は、そう思った。一方で、セイウンスカイは迷わず、そして気負わず逃げていたのだから。
ペースは決して遅くはなかった。この馬場で、無理にペースを落とす必要もなかったのだし、馬にとってもそれが一番心地よかったのであろう。一方で、前走で掴んだ緩急の妙を交えつつ、坂を越えての直線、弥生賞を思い出すような爽快な逃げ足が、そこにはあった。灰色の馬体が、まだこの当時は11月初週であった淀の舞台を独走する。今度は、スペシャルウィークが来る余地はなかった。前半の負荷がありながらそれでも2着に上がって矜持を見せようとする名馬を、彼方に置き去りにしつつ、秋晴れの空はセイウンスカイに染まったのである。3.03.2のレコードタイムは、一週前に府中の欅の向こうで奪われた不世出の逃げ馬の風景を、再び戻すような瞬間ではあった。
しかし、そこにいるのはセイウンスカイである。爽快で気風良い逃げを決め、横山典弘が美しく水平に手を上げた瞬間は、セイウンスカイが最もセイウンスカイであった瞬間でもあったのだ。そして、それこそが、この馬のファンが求めていたものだったのである。彼は、自らの色で、競馬界の悲しみを埋めた。
1995年生まれの世代は、日本の競馬史においても屈指の好メンバーが揃っていた。しかし、少なくとも自分は、前年の個性派世代に伍するほどの魅力を持つものなのか、疑う面はあった。この日までは。この馬が2冠馬というタイトルを得た辺りから、この世代は本当の意味で輝き始めたように思われる。セイウンスカイは、アイドルホースとして持つべきものの多くを持っていた。こういう馬が間にいるからこそ、世代全体のキャラクター性が磨かれたのであろう。

コメント一覧
ぷろっとかんせー
指定量の1.5倍。これから三分の一カットせないかん(笑)。
そしてなぜかもう一個締め切り増えそうな話ですぜ?
あと皐月の敵はキングヘイローだったと思うがどうか。
字数は制限あると結構キツいっすよねぇ。
自分的にはもう少しこのシリーズ少ない字数でやろうとしたけれど、ノースフライトが今ひとつ上手く書ききれなかった気がしたのでちょっと広げた。
皐月は、ちょっと推敲してるうちにングヘが抜け落ちました。今日は寝るので、近々修正と言うことで。
と思ったけど、今修正した。
乙でございます。面白く読ませていただきました。自分には、あの世代について後になって思い返すとき、あのレース、とか、あの馬、とかそういう区分けではなく、あの世代についての「イメージ」を手探ると、いつも最初にセイウンスカイの逃げが思い浮かんできます。
是非ニシノプライドには大成して欲しいなぁ、と。
gaさま>
自分もそういう意味でセイウンスカイはいろんな所でレースを締めてたと思います。
普通に記録でエルグラスペの抜ける世代ですが、この馬やエアジハード、キングヘイローがいるからこその世代でもあるんですよね。