良血馬2題。
◆アルティストロワイヤル(IRE)
*デインヒル×Agathe(Manila)×Albertine(Irish River)×Almyre[F8-f]
あれ、と思ったのはこの馬の3つ上の全姉は勿論トップクラスの名牝として鳴らした Aquarelliste なのだけれど、産地がこの馬はアイルランド。そして生産者も姉がアレフランス・ステーブルだったのにこちらはデイトン・インヴェストメント。どの道ヴィルデンシュタインの名義内でコロコロ変わってるだけっぽいのだけれど、複雑だなぁ。てな訳で、まぁこの一族の馬らしく、牝系のラインは同じイニシャルを守ってということで姉ともどもAではじまることだけは変わらないのですが。
この馬の配合を見ていてやはり面白いなぁ、と思うのは母 Agathe の配合。メインクロスは Wild Risk の4×3のインブリードで、母方に関しては母母父のところでクロス馬になっている。結構ヴィルデンシュタインはこの辺りの位置(祖母父とか曾祖母父とか)をクロス馬に使うのが好きであると何処かで読んだ記憶がある。ただ、この配合はそれだけに留まってはいない。Wild Risk の血統表をひもとくと、祖父に St.Simon 産駒の Rabelais がいて、母方は Blandford を挟んで Tourbillon の父 Ksar が入るのだけれど、父の Manila には Lyphard の祖母 Barra のところで Ksar と Rabelais の組み合わせが見られる。一方、Agathe の牝系を4代遡ったところに入る Labrador というマイナーな種牡馬がいるのだが、これもまた祖父 Rabelais に母父 Ksar。要するに、これだけマイナーな血脈の組み合わせを4本も一つの牝馬に入れているのである。この配合が意図的でないと思う方が難しい。系統繁殖として見事であり、名繁殖の相と言えるだろう。
こうしたフランス血脈的なエネルギーを秘めた母に対して、フランス血脈の希薄な*デインヒルとの組み合わせは、字面の3×4とかのクロスに比して、意図としてはアウトブリード的であり、エネルギーを解き放つ方向での競走馬向きな配合パターンであろう。しかし、配合として粗雑にならないのは、Lyphard と Danzig の間で橋渡しをする血脈の存在による。前者に関しては母父の Court Martial、後者に関しては祖母の Petitioner である。Court Martial の方が血が古く、Fair Trial×Hurry On×Gainsborough という累代。これに対して Petitioner はやや血が新しく代が降るが、父方に Fair Trial と Gainsborough、母方に Hurry On を入れて、弱いニックス的な関係にある。Lyphard の母 Goofed が Court Martial と Ksar×Rabelais の Barra の組み合わせで、ポジション的に良い場所にこの弱いニックスがフックされていると言えるだろう。
良血には違いなく、状態もフレッシュであり、やや*デインヒルと日本の馬場の相性には問題がある気はするものの、さほど人気しないならば魅力的ではあろう。ヤネはどうしたもんかであるが。ところで、ヴィルデンシュタインってこの血統でこんな馬作ってんのな。変態(褒め言葉)。馬名はそのまんま「王宮芸術家」で、馬主の本業が画商であることとの関連。
◆サデックス(GB)
Sadler's Wells×Remote Romance(Irish River)×Aviance(Northfields)×Minnie Hawk[F8-f]
はてさて、今年の Sadler's Wells のG1勝ちってどんなものかなぁ、と思って見てみると、恐らく自分の調べ忘れがなければ、この馬のラインラント、Yeats の金杯と愛レジャ、あとは Listen がフィリーズ狸を勝ってるくらいではなかろうか。大種牡馬 Sadler's Wells も直仔レベルに至ってはかくも落日の中にあるのだ、と感慨にふける部分ではあろう。なにしろ、英愛で勝ってる2頭、片方はステイヤーで片方は2歳であり、言わばメインストリームのG1からは退場しているのである。実際のところまだ現役種牡馬なだけにまだ活躍馬を出す余地は残っているが、まぁそんな感じで、時の流れを感じざるを得ない。
そういった中では、今年の Saddex のドイツでの活躍は、かろうじてこの種牡馬の息子が演じたメインストリームでのパフォであったとは言えるだろう。一方、ドイツ調教でこの種牡馬の仔が勝つのもこれまで極めて珍しい事例であったが、そういうドイツの半周遅れた主流の取り込みってのは完全にこの競馬国のスタイルではある。しかし、入れるときは入れるで、かなりの良血の部類を入れてきた、とは言えるだろう。現代におけるトップクラスの牝系である Best in Show 系であり、祖母は自身フェニックスSを制してG1馬となったほか、繁殖としても Chimes of Freedom、*フサイチデノンと2頭のG1馬を輩出、孫の代では本馬のほか*スピニングワールドや Aldebaran がいる。綺羅星のごとき近親の豪華さでは今年の招待馬中ではダントツである。そうした近親の中では距離適性的に近いのはフサイチであるが、実際の配合パターンとしては*スピニングワールドが近いか。この名マイラーと Saddex を比較すると、同じ Northern Dancer2×4 ではあるが、Nureyev が Special の直仔であり、Riverman が Never Bend の直仔であることによって Nasrullah が両側で一代上がってきており、更に Dalmary とあいまって Lady Josephine×Blandford の味付けが強くなる印象がある。この辺りでスピードが優先するタイプになるわけ。一方 Saddex は Special と Northern Dancer の間に Bold Reason が割り込み、Aviance と Riverman の間に Irish Star が割り込む。このことによって、サドラーズお得意の Bold Reason≒Lalun が出来るのはまずポイントであるが、これが出来ることによって La Troienne が一本増える。Best in Show 系の能力の源泉にはこの牝馬が内包する La Troienne の活用が重要であり、ここは一つのポイント。更に、Irish Star は Sweet Lavendar3×5 という牝馬クロスを持つが、Bold Reason がもってきた Turn-to にもこの血脈は入り、孫世代の Source Sucree が牝馬クロスとなる。こうした牝馬の柔らかさを取り入れた配合の馬が「牝馬重視」な血統ポリシーの根強いドイツに渡った、みたいな辺りでの偶然もなかなか面白いものだ。
実のところ、配合をこうして仔細に見ると、実馬はマイルハーフの専門家的になっているものの、やはり中距離タイプな印象は拭えない。その辺りを考えるに、どちらかというとパワーで距離をこなしているのかなと思われる面はある。実際、日本の馬場では Best in Show ってともするとパワー過剰で軽快さが足りないタイプも目に付くし。そういう点では、この馬も日本への適性って意味ではやや軽快さが足りない辺りでの難しさを持っているようには思われる。スピードが無いタイプではないので、どこまで喰らいつくような競馬が出来るか、であろうか。
馬名は Sadler に馬主の出身地の Dexheim をあわせたものだと JRA の競馬学校サイトにはあった。Dexheim 自体はマインツの南にちょっと行った辺りらしい。ラインヘッセンの田園地帯、つーかワインどころになるのかな。
◆アルティストロワイヤル(IRE)
*デインヒル×Agathe(Manila)×Albertine(Irish River)×Almyre[F8-f]
あれ、と思ったのはこの馬の3つ上の全姉は勿論トップクラスの名牝として鳴らした Aquarelliste なのだけれど、産地がこの馬はアイルランド。そして生産者も姉がアレフランス・ステーブルだったのにこちらはデイトン・インヴェストメント。どの道ヴィルデンシュタインの名義内でコロコロ変わってるだけっぽいのだけれど、複雑だなぁ。てな訳で、まぁこの一族の馬らしく、牝系のラインは同じイニシャルを守ってということで姉ともどもAではじまることだけは変わらないのですが。
この馬の配合を見ていてやはり面白いなぁ、と思うのは母 Agathe の配合。メインクロスは Wild Risk の4×3のインブリードで、母方に関しては母母父のところでクロス馬になっている。結構ヴィルデンシュタインはこの辺りの位置(祖母父とか曾祖母父とか)をクロス馬に使うのが好きであると何処かで読んだ記憶がある。ただ、この配合はそれだけに留まってはいない。Wild Risk の血統表をひもとくと、祖父に St.Simon 産駒の Rabelais がいて、母方は Blandford を挟んで Tourbillon の父 Ksar が入るのだけれど、父の Manila には Lyphard の祖母 Barra のところで Ksar と Rabelais の組み合わせが見られる。一方、Agathe の牝系を4代遡ったところに入る Labrador というマイナーな種牡馬がいるのだが、これもまた祖父 Rabelais に母父 Ksar。要するに、これだけマイナーな血脈の組み合わせを4本も一つの牝馬に入れているのである。この配合が意図的でないと思う方が難しい。系統繁殖として見事であり、名繁殖の相と言えるだろう。
こうしたフランス血脈的なエネルギーを秘めた母に対して、フランス血脈の希薄な*デインヒルとの組み合わせは、字面の3×4とかのクロスに比して、意図としてはアウトブリード的であり、エネルギーを解き放つ方向での競走馬向きな配合パターンであろう。しかし、配合として粗雑にならないのは、Lyphard と Danzig の間で橋渡しをする血脈の存在による。前者に関しては母父の Court Martial、後者に関しては祖母の Petitioner である。Court Martial の方が血が古く、Fair Trial×Hurry On×Gainsborough という累代。これに対して Petitioner はやや血が新しく代が降るが、父方に Fair Trial と Gainsborough、母方に Hurry On を入れて、弱いニックス的な関係にある。Lyphard の母 Goofed が Court Martial と Ksar×Rabelais の Barra の組み合わせで、ポジション的に良い場所にこの弱いニックスがフックされていると言えるだろう。
良血には違いなく、状態もフレッシュであり、やや*デインヒルと日本の馬場の相性には問題がある気はするものの、さほど人気しないならば魅力的ではあろう。ヤネはどうしたもんかであるが。ところで、ヴィルデンシュタインってこの血統でこんな馬作ってんのな。変態(褒め言葉)。馬名はそのまんま「王宮芸術家」で、馬主の本業が画商であることとの関連。
◆サデックス(GB)
Sadler's Wells×Remote Romance(Irish River)×Aviance(Northfields)×Minnie Hawk[F8-f]
はてさて、今年の Sadler's Wells のG1勝ちってどんなものかなぁ、と思って見てみると、恐らく自分の調べ忘れがなければ、この馬のラインラント、Yeats の金杯と愛レジャ、あとは Listen がフィリーズ狸を勝ってるくらいではなかろうか。大種牡馬 Sadler's Wells も直仔レベルに至ってはかくも落日の中にあるのだ、と感慨にふける部分ではあろう。なにしろ、英愛で勝ってる2頭、片方はステイヤーで片方は2歳であり、言わばメインストリームのG1からは退場しているのである。実際のところまだ現役種牡馬なだけにまだ活躍馬を出す余地は残っているが、まぁそんな感じで、時の流れを感じざるを得ない。
そういった中では、今年の Saddex のドイツでの活躍は、かろうじてこの種牡馬の息子が演じたメインストリームでのパフォであったとは言えるだろう。一方、ドイツ調教でこの種牡馬の仔が勝つのもこれまで極めて珍しい事例であったが、そういうドイツの半周遅れた主流の取り込みってのは完全にこの競馬国のスタイルではある。しかし、入れるときは入れるで、かなりの良血の部類を入れてきた、とは言えるだろう。現代におけるトップクラスの牝系である Best in Show 系であり、祖母は自身フェニックスSを制してG1馬となったほか、繁殖としても Chimes of Freedom、*フサイチデノンと2頭のG1馬を輩出、孫の代では本馬のほか*スピニングワールドや Aldebaran がいる。綺羅星のごとき近親の豪華さでは今年の招待馬中ではダントツである。そうした近親の中では距離適性的に近いのはフサイチであるが、実際の配合パターンとしては*スピニングワールドが近いか。この名マイラーと Saddex を比較すると、同じ Northern Dancer2×4 ではあるが、Nureyev が Special の直仔であり、Riverman が Never Bend の直仔であることによって Nasrullah が両側で一代上がってきており、更に Dalmary とあいまって Lady Josephine×Blandford の味付けが強くなる印象がある。この辺りでスピードが優先するタイプになるわけ。一方 Saddex は Special と Northern Dancer の間に Bold Reason が割り込み、Aviance と Riverman の間に Irish Star が割り込む。このことによって、サドラーズお得意の Bold Reason≒Lalun が出来るのはまずポイントであるが、これが出来ることによって La Troienne が一本増える。Best in Show 系の能力の源泉にはこの牝馬が内包する La Troienne の活用が重要であり、ここは一つのポイント。更に、Irish Star は Sweet Lavendar3×5 という牝馬クロスを持つが、Bold Reason がもってきた Turn-to にもこの血脈は入り、孫世代の Source Sucree が牝馬クロスとなる。こうした牝馬の柔らかさを取り入れた配合の馬が「牝馬重視」な血統ポリシーの根強いドイツに渡った、みたいな辺りでの偶然もなかなか面白いものだ。
実のところ、配合をこうして仔細に見ると、実馬はマイルハーフの専門家的になっているものの、やはり中距離タイプな印象は拭えない。その辺りを考えるに、どちらかというとパワーで距離をこなしているのかなと思われる面はある。実際、日本の馬場では Best in Show ってともするとパワー過剰で軽快さが足りないタイプも目に付くし。そういう点では、この馬も日本への適性って意味ではやや軽快さが足りない辺りでの難しさを持っているようには思われる。スピードが無いタイプではないので、どこまで喰らいつくような競馬が出来るか、であろうか。
馬名は Sadler に馬主の出身地の Dexheim をあわせたものだと JRA の競馬学校サイトにはあった。Dexheim 自体はマインツの南にちょっと行った辺りらしい。ラインヘッセンの田園地帯、つーかワインどころになるのかな。
Comment
>この血統でこんな馬作ってんのな。
わあ、こりゃびっくり。
というか、なんぼ血統検索楽になったからって、種牡馬見つけるのもそれなりに大変でしょうに。
冗談半分でクロス馬検索したらたまたまひっかかったのかしらん。
わあ、こりゃびっくり。
というか、なんぼ血統検索楽になったからって、種牡馬見つけるのもそれなりに大変でしょうに。
冗談半分でクロス馬検索したらたまたまひっかかったのかしらん。
宮嶋陽人 | URL | 2007/11/22/Thu 01:27[EDIT]
宮嶋さま>
丁度唯一の代表産駒である Silic がいた時期なんで、目に付いたかもですね。
まぁでも Silic も走ったのはアメリカ移った99年以降だから、やや失当か。
取り敢えず Blushing Groom の Wild Risk に目をつけて適当にあたってたらエラく綺麗に嵌る馬が出たので勢いで、みたいな感じでしょうかね。
丁度唯一の代表産駒である Silic がいた時期なんで、目に付いたかもですね。
まぁでも Silic も走ったのはアメリカ移った99年以降だから、やや失当か。
取り敢えず Blushing Groom の Wild Risk に目をつけて適当にあたってたらエラく綺麗に嵌る馬が出たので勢いで、みたいな感じでしょうかね。
有芝まはる(ry | URL | 2007/11/23/Fri 23:28[EDIT]
宮嶋様>
>というか、なんぼ血統検索楽になったからって、種牡馬見つけるのもそれなりに大変でしょうに。
そう考えると、NearcoやらThe Tetrarchやらは、神業の領域ですね。。。。
(Ribotはまあ、テシオ閣下が土台から組み上げた血統なので差し置いておくとして)
(いや、それでもがっちり組み上げ切ってしまうところに別の凄さがあるわけですが)
>というか、なんぼ血統検索楽になったからって、種牡馬見つけるのもそれなりに大変でしょうに。
そう考えると、NearcoやらThe Tetrarchやらは、神業の領域ですね。。。。
(Ribotはまあ、テシオ閣下が土台から組み上げた血統なので差し置いておくとして)
(いや、それでもがっちり組み上げ切ってしまうところに別の凄さがあるわけですが)
NOBIE | URL | 2007/11/24/Sat 21:21[EDIT]
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